4月17日。 前回のブログを掲載して数日後、社長からメールが届いた。
「4月23日13時に事務所へ来てください。」
その一文を読んで、何となく違和感があった。 社長は基本的に“せっかちな性格”だ。 何かあれば即日、遅くても翌日には動くタイプ。 そんな社長が、6日後という妙に間延びした日程を指定してきた。
正直、意味深だった。
最初は、社長の頭の中をいろいろと想像した。 怒っているのか、冷静なのか、何を考えているのか。 18年も一緒にやってきたから、つい“相手の思考を読む癖”が出てしまう。
だが、すぐに気づいた。
もう、その思考は必要ない。 私はこの会社を去るのだから。
今までの癖で、つい社長の意図を読み解こうとしてしまったが、 それがどれほど無駄な思考か、即座に理解した。
……と、頭では理解しているのに、 心の片隅では“最悪のパターン”を常に想定してしまう自分がいた。
18年の癖は、そう簡単には抜けない。 反射のように出る反応だけが、まだ残っていた。
そして、4月23日が来た

6日間はあっという間で、気づけば当日になっていた。
社長が私に伝えたかったことは、要約するとこうだった。
「社員への解雇指示くらいで、退社する必要はないんじゃないか。」
その言葉を聞いた瞬間、 社長にとって今回の件が“どの程度の重さ”なのかが、はっきりと見えた気がした。
社長の言い分は理解できる。 会社を守るための判断、組織を動かすための決断。 経営者としての視点で見れば、間違っているとは言えない部分もある。
そこで私は、落ち着いて淡々と答えた。
「社長の考えも手法も、一経営者として理解できます。 そして、社長のことを尊敬しています。」
これは本心だった。 会社を立ち上げ、何十年も継続させてきた実績は、誰にでもできることではない。 その努力と覚悟は、間近で見てきたからこそわかる。
「ただ、今回の解雇指示は、私の考えとは圧倒的に違います。 これは経営的にどちらが正しいかの問題ではありません。」
いまの自分があるのは、きれいごとじゃなく本当にスタッフのおかげだ。 自分がどれだけサイコパス気質だと言われようが、その事実だけは揺らがない。 これは本当に、心の底からそう思っている。
「価値観、生き方の問題です。 どうかご理解ください。」
社長はすべてを理解している様子だった。 相変わらず頭の回転が速く、状況を察する力も鋭い。 何を言っても、私が退社することを止めるのは不可能だと、すぐに悟った様子だった。
その後もいくつか話はあったが、ここに書くような内容ではない。 そして、その日の最後に、ひとつ予定が決まった。
5月19日。 最大の取引先の社長に、私と社長の二人で退社の報告に行く。
この事自体は、特別なことではない。 むしろどうでもいい。
ただ、ミーティングが終わったあと、社長は私を近所の自営カフェに誘おうとしていた。 直接ではなく、雰囲気で。 だが私は「時間がないので行きますね」とだけ伝えて、その場を離れた。
その瞬間、 これが今の関係性のすべてを物語っている そう感じた。
別れたあと、あえてメールで退社日を伝えた。 「6月末(有給休暇を除く)で退社します。」
即座に返信があった。 いつもと同じ、短いひと言。
「了解です」
その“了解です”が、18年の終わりを告げた。


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